マンション共用部分と専有部分の修繕区分|費用負担のルールを解説

費用・積立金

共用部分と専有部分の定義

マンションの修繕費用をめぐるトラブルの多くは、「この部分は誰が負担するのか」という区分の曖昧さから生じます。区分所有法では、マンションの部分を「共用部分」と「専有部分」に大別しており、修繕費用の負担ルールはこの分類によって決まります。

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専有部分とは、各区分所有者(住戸所有者)が単独で所有・使用する部分です。一般的には各住戸の床、壁、天井、屋内の配線・配管などが該当します。この部分の修繕費は原則として当該住戸の所有者が負担します。

共用部分とは、全区分所有者で共有する部分です。エントランス、廊下、階段、エレベーター、屋上、外壁、給排水幹線管などが典型例です。共用部分の修繕費は修繕積立金から支出され、全住戸が負担します。

しかし現実は複雑です。一見「専有部分」に見えても、実は建物全体の耐久性や安全性に関わる「共用部分」の場合もあり、これがトラブルの源泉となります。

共用部分の修繕の典型例

外壁・屋上防水
建物全体を保護するため、共用部分に分類されます。外壁塗装やタイルの補修も原則として修繕積立金で賄われます。

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給排水・ガス幹線管
各住戸に水やガスを供給する幹線部分は共用部分です。竣工から30年超経過すれば、マンション設備の更新時期として大規模な取り替え工事が発生します。

エレベーター・階段・廊下
すべての住戸が使用する共有スペースであり、保守・修繕は修繕積立金が充当されます。エレベーターの部品交換やロープ交換は費用がかかりますが、共用部分なので全戸負担です。

屋根・躯体(構造体)
建物本体を支える躯体は最も重要な共用部分です。鉄筋コンクリートのひび割れ補修なども共用部分の修繕です。

専有部分の修繕の典型例

室内の設備機器
給湯器、エアコン、キッチン設備などは各住戸の専有部分に属する設備です。これらが故障した場合、当該住戸所有者が修繕費を負担します。

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屋内配管(分岐管以降)
幹線管から各住戸に引き込まれた分岐管以降の給排水管は、一般的に専有部分に分類されます。室内配管の老朽化による漏水は、その住戸所有者の修繕負担になります。

床・壁・天井(屋内)
各住戸内部の内装材は、原則として専有部分です。壁紙の交換、床の張り替え、天井のクロス補修などはすべて個別負担となります。

グレーゾーンの扱い――争点になりやすい部分

実際の大規模修繕では、共用部分か専有部分かが曖昧な「グレーゾーン」が多く存在します。これが管理組合内でのトラブルの温床になります。

玄関ドア・窓枠・サッシ

玄関ドアは「建物外周の防水・防風を守る重要な部分」と見なし共用部分と判断する管理組合が多いですが、「個々の住戸の出入口」として専有部分と考える場合もあります。窓のアルミサッシについても、同様の議論があります。

判断基準は「建物全体の耐久性に影響するか否か」です。老朽化したドアやサッシから雨水が浸入し、躯体まで傷む恐れがあれば、共用部分の修繕として大規模修繕に含める傾向です。

バルコニー(ベランダ)

バルコニーの床や手すりは「共用部分」ですが、バルコニー内部で住戸所有者が設置した物置やエアコン室外機は「専有部分の付属物」と見なされます。バルコニー床の防水工事は共用部分の修繕ですが、バルコニーに置かれた個人荷物の移動費用や一時保管料を誰が負担するかで揉めることがあります。

給排水管の分岐点

幹線管は明らかに共用部分ですが、「どの地点から先が専有部分か」の定義が管理規約に明記されていないことがあります。一般的には「各住戸の玄関直前」「メーターボックス」「台所の接続点」など、規約で定められます。

バルコニーの手すり・格子

バルコニー手すりの材質に樹脂製と金属製が混在する場合、劣化スピードが異なり、部分的な補修が必要になることがあります。全体を共用部分として修繕するか、樹脂部分だけを個別対応とするか、方針が曖昧だと費用負担で揉めやすいです。

管理規約の確認が最優先

共用部分と専有部分の区分は、最終的に「管理規約」で定めることになります。大規模修繕の実施前に、必ず管理規約の「共用部分の定義」欄を確認しましょう。

以下の項目が管理規約に記載されているか確認してください:

  • 共用部分と専有部分の具体的な区分(図面付き)
  • 給排水管などの分岐点の定義
  • 大規模修繕時の境界取扱い(玄関ドア、窓など)
  • グレーゾーン部分の負担方法

規約に記載がない場合は、修繕委員会の立ち上げ時に、コンサルタントや設計業者の指導を受けながら、管理規約の改定を検討する必要があります。

実際のトラブル事例

事例1:玄関ドア修繕の負担争い

あるマンションで大規模修繕時に玄関ドアの交換を提案されました。A理事は「ドアは各住戸の専有部分だから、個別負担にすべき」と主張し、B理事は「建物外周の防水を守るため共用部分として修繕すべき」と対立。結局、規約を確認したところ「玄関ドア枠までが共用部分」と明記されていたため、共用部分の修繕として実施されました。事前に規約を確認していれば、総会での議論時間を短縮できたはずです。

事例2:バルコニー防水工事と個人荷物

バルコニー床の防水工事実施時、住戸所有者の物置やエアコン室外機の移動が発生しました。修繕費には「仮移動料」が含まれていましたが、紛失や破損に対する補償をめぐり、「これは共用部分の修繕だから、個人荷物の責任は各自が負う」と管理会社は主張。一方、住戸所有者側は「修繕業者の指示で動かしたのだから、補償すべき」と反発。その後、大規模修繕のトラブル事例対策として、事前に「荷物移動時の注意事項」を全戸に通知する運用に改めました。

事例3:給排水管の劣化

給排水管の取り替え工事検討時に、「幹線管までは共用部分だが、分岐管以降の交換は各住戸負担」という規約の解釈をめぐり、意見が分かれました。実際には分岐点の定義が曖昧で、約30%の住戸では「メーターボックスまで」と解釈し、70%の住戸では「台所接続点まで」と解釈していました。最終的に、資金計画の見直しで共用部分の範囲を統一し、予算配分を調整することで決着しました。

グレーゾーン部分の判断基準

管理規約に明記されていないグレーゾーン部分については、以下の基準で判断することが一般的です:

基準1:建物全体の耐久性への影響
その部分の劣化が、他の住戸や建物本体に波及する可能性があれば、共用部分と判断される傾向です。玄関ドアからの雨漏りが躯体に影響するなら、共用部分と見なされやすいです。

基準2:法的責任
建物所有者(管理組合)が法的に安全性を保証すべき部分は、共用部分と見なされます。外壁の安全性は建物所有者の責任なので、外壁関連の修繕は共用部分です。

基準3:個別使用の有無
特定の住戸のみが使用・利益を受ける部分は専有部分、全住戸が共通して利用する部分は共用部分と判断されます。

修繕計画策定時の確認手順

大規模修繕の流れと進め方では、実施設計段階で「修繕内容の詳細な区分」が示されます。その時点で、共用部分と専有部分の区分が明確になっているか確認しましょう。疑問な点があれば、設計業者やコンサルタントに相談し、管理組合の総会で承認される前に、認識を統一しておくことが極めて重要です。

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